お萩と牡丹餅(ぼたもち)ってどこが違うの?…こう聞かれると答えに困ってしまう方もいると思います。粒あんとこしあんの違い?それとも中の米粒が残っているものと、そうでない完全な餅状のものとの違い?…年代や住む地域によって区別の仕方も様々なようですが、実はもともとお萩も牡丹餅も同じ物なんです。両者ともあずきあんをまぶした餅に変わりはないのですが、その中でも春に食べるものを「牡丹餅」、秋に食べるものを「お萩」と呼ぶのです。では、どうしてそう呼ぶのでしょうか?
その答えは、それぞれの漢字の中にあります。「牡丹餅」は、春の彼岸、牡丹の花が咲く季節に供えられたものの呼び方で、そのあずきの粒を牡丹の花に見立てた名前です。一方、秋の彼岸、萩の花が咲く季節に供えられたのが「お萩」。こちらも、そのあずきの粒を萩の花に見立てたことによります。つまり、同じ物でも季節によってその呼び方を変えているのです。
夏と冬にもあるんです…
春の牡丹餅、秋のお萩。それでは、夏と冬は…?それぞれ、ちゃんと呼び方があるんです。夏は「夜船(よふね)」、冬は「北窓(きたまど)」と呼びます。どうやら牡丹餅の作り方に関係しているようです。牡丹餅は餅と違って「ぺったんぺったん」と餅をつきません。つまり隣人からすると、いつついたのかわからない「つき知らず」の餅なんです。そこから「つき知らず」を「着き知らず」にかけ、夜の船はいつ着いたのかわからない「着き知らず」というところから「夜船」と呼んだのです。同様に冬の「北窓」は、北の窓からは月が見えない、つまり「月知らず」というところから名付けられています。夏の夜船、冬の北窓。どちらも景色が頭の中に浮かんでくるような素敵な言葉だと思いませんか?