ー絵本紹介用ー
ー今日の読み聞かせ用ー
ーお気に入り絵本用ー
香山美子/作 柿本幸造/絵
人気絵本『どうぞのいす』の続編的絵本です。『どうぞのいす』で木の椅子を作ったうさぎさん。今作では、みんなで使える大きなテーブルを作りました。誰かのために何かをし、その結果、誰かが、そして自分も幸せな気持ちになれる。この絵本には、そんな「誰かのために何かをする」ことの素晴らしさが描かれています。
さて、うさぎさんは、みんなが大好きな切り株のある丘までテーブルを運んでいくことにしました。これが結構大荷物で、車に乗せて「ごろりんごろりん」転がしていくと…「ごろんごろん」…急に荷物が軽くなった気がしました。またしばらく行くと「ころんころん」…ころころ…ころろろろ…どんどん荷物が軽くなっていきます。実は、テーブルを運ぶうさぎさんのお手伝いをするために、たくさんの動物達が集まって後ろから押してくれていたのです。おかげで、テーブルを無事に切り株の前へと運ぶことが出来ました。みんなで使えるテーブルが出来て、みんな大喜び。
ところが、テーブルの前には切り株が一つしかありません。動物達は座るための順番待ちをしています。これを見たうさぎさん。急いで家へ帰ると…
読み聞かせを終えて子供が一言…みんながやさしい絵本だね。その言葉を聞いて、その笑顔を見て…絵本の中の話だけではなく、私まで幸せな気持ちになりました。この絵本は、繰り返しがある内容で、動物達の手伝いが増えるたびに、荷物を運ぶ音が変わっていきます。2回目の読み聞かせの時には、次男(4才)がその音を話に合わせて自然と口にしていました。絵本の内容はもちろん、絵、文章とも素晴らしく、この絵本に描かれる「やさしさ」あふれる世界へ、子供達をしっかりひき込んでくれる素敵な絵本でした。
たしろちさと/ぶん・え
仲良しのやぎくんとはりねずみくんとぞうくんが、国で一番高い山「たかいたかいやま」へとやって来ました。今日は、頂上でキャンプをする予定です。お調子者のはりねずみくんは楽しくて楽しくて仕方がないみたい。まだ登り始めたばかりで先は長いというのに、もう駆け出そうとしています。するとその時、隣を歩いていた猿おじさんが話しかけてきました。先は長いぜ、ポレポレ山登りだぜ…
この「ポレポレ」という言葉、絵本のタイトルにもなっていますが、一体どういう意味なのでしょうか?実はポレポレというのは「ゆっくり」という意味の言葉で、後で調べてみてわかったのですが、スワヒリ語のちゃんとした言葉だそうです。店の名前なんかに使われていたりもするようなのですが、私は初めて聞きました。
さて山登りでは、あまりに険しい道のりにくじけそうになったりもしますが、みんなで力を合わせて「ポレポレ」山登り。いざ、頂上へ。その夜のキャンプは、喜び、楽しさ、そして感動あふれる素晴らしいキャンプになりました。
子供達が大好きな絵本。何度も読み聞かせをしました。初めてこの絵本を読んだ時、読み終わると同時に長男が一言「うちにはテントあるの?」…どうやらキャンプをしたくてしょうがなくなったみたい。それくらい印象的なキャンプシーンでした。ちなみに、私の家でも、時々山登りに行きます。まだ小さな山しか登っていませんが、それでも頂上に着いた時は嬉しいもんですね。今度山を登る時は、「ポレポレ」を合い言葉にしながら登りたいなと思います。
かとうあじゅ/作
みんなが暮らす町の中、あちらこちらを渡り歩く不思議な生き物じっちょりん。彼らはとても小さくて、隠れることが得意。だから、じっちょりんの家族を見つけることは難しいかもしれません。でも、彼らが歩いた道には、とても素敵な「足あと」を見つけることが出来るでしょう。それは…町のいたる所にかわいらしく、時に力強く咲くたくさんの草花です。
じっちょりんは花びらや葉っぱを食べます。でも種だけは食べずに、どんぐりのぼうしで作った「種かばん」の中にためていきます。そして、かばんが種でいっぱいになると、町のいたる所に種を植えてまわるのです。種をすべて植え終われば、次はその場所に住み、また種を集め続けます。
公園の隅、アスファルトの隙間…なんでこんな所に?というような場所に花が咲いているのも、実はじっちょりんのおかげなのかもしれません。
いろいろな草花が丁寧に描かれていました。その名前まで書かれているのが嬉しいですね。ちょっとした植物図鑑を見ているような気分が味わえました。最後にはじっちょりんが歩いた町の全体図が描かれています。どこをどう歩いたのか…読み聞かせをした後、話が盛り上がると思います。また、どのページにも、ものすごく小さなハートが一つ描かれており、それを探すというおまけのお楽しみもついています。
かとうあじゅ/作
とても小さくてちょっと不思議な生き物「じっちょりん」の生活を描いた物語。『じっちょりんのあるくみち』の続編です。
今作に描かれているのは、じっちょりんの世界の小さなお月見会。なんと、そのお月見会に新たなキャラクター達が登場します。彼らは、じっちょりん家族によく似た姿しており、さらに、花びらや葉っぱを食べ、その種も集めます。
新しいじっちょりん登場…?と思いきや、じっちょりんではありませんでした。お月見会にやって来たのは、こっちょりん家族にたっちょりん家族。ぼっちょりん家族やぶっちょりん家族なんてのもいます。ということは…「じっちょりん」というのは単なる名前?…なんだか凄い展開になってきました。
小さな生き物達による、にぎやかでかわいらしくて、ちょっと幻想的なお月見会の物語。最後に描かれた美しい月の光が心に残りました。
前作同様、いろいろな草花が丁寧に描かれています。お月見会というだけあって、秋の草花が描かれており、巻末には秋の七草の覚え方も記されていました。小さなハートを探すというおまけのお楽しみも、もちろんついていますよ。私は、物語の最後に描かれた満月の絵が大好き。心がいやされました。空気が澄んだ秋の夜におすすめの一冊です。
さとみきくお/さく しおたまさき/え
頭だけが異常に大きなアリがいるのを知っていますか?その頭で巣穴の入り口を塞ぎ、外敵などから巣を守るそうです。私はこの絵本を読んで、初めて知りました。巣穴から外へ出て必死に働く「働きアリ」とは違い、ただ巣穴の入り口を塞いでじっとしているだけの存在。その姿は、まさに門番そのものです。
この絵本は、長い間、門番を勤め上げた「もんばんアリ」のおじさんと、明日からその役割を引き継ぐ「もんばんアリ」のぼうやとの最後の会話を描いた物語です。そこに描かれる「もんばんアリ」としての機微をどう感じるでしょうか?
地面の下の世界しか知らない「もんばんアリ」という生き方。働きアリ達にバカにされようが、自分の身体を使ってひたすらじっと巣穴を守る。巣穴の入り口から少しだけ見える外の世界に何を思うのか?『もんばんアリと、月』というタイトルに込められた作者の思いが、深い余韻を残してくれました。
前書き「もんばんアリさんに捧ぐ」にも書かれていますが、作者はメーテルリンクの『蟻の生活』を読んで、門番をする蟻の存在を知ったようです。私も『蟻の生活』を読んでみました。それによると、門番をするアリは、門番というよりは門そのもので、巣がある場所の外観に偽装した頭を持ち、巣の入口を栓のようにきっちりと塞ぐのだそうです。まさに持って生まれた資質。それは使命であり、運命と言えるものかもしれません。
わたりむつこ/作 でくねいく/絵
絵本の表紙、子うさぎ達が温かそうなマフラーを首に巻いています。おばあちゃんからプレゼントされた手編みのマフラーです。外は、辺り一面銀世界。見るからに寒そうな雪景色。でも、子うさぎ達は大丈夫。温かいマフラーを首にしっかり巻いて外へ遊びに出かけました。
実は、子うさぎ達には気にかかっていることがありました。それは森で一番年を取ったブナの木「ぶなじい」のこと。子うさぎ達はぶなじいが大好きでした。ぶなじい、寒くないかな…
子うさぎ達はぶなじいに会いに行くことにしました。埋もれてしまうほど降り積もった雪道を歩き、たどり着いた森の中。ぶなじいは、すっかり凍えてしまったかの様に身動き一つしません。子うさぎ達が両手いっぱいにマフラーを広げ、ぶなじいの幹にあててあげると…
寒い寒い冬の物語ですが、とても温かくて、ほのぼのとしていて、やさしい気持ちになれる絵本でした。文章も読みやすく、物語もしっかりしているので、読み聞かせに向いていると思います。いろいろ調べた所、どうやら、この絵本は『もりのおとぶくろ』という作品の続編のようです。そちらの絵本も読んでみようと思います。
ダニエル・カーク/さく わたなべてつた/やく
ねずみのサムの物語。サムは図書館に住んでいます。本を読むのが大好きで、毎晩、誰もいなくなると、いろいろな本を山積みにして読んでいました。今までたくさんの本を読んできたサム。彼の頭の中は、いろいろな知識や空想の世界でいっぱいでした。
ある晩、サムは自分で本を書いてみたいと思い、『ちゅてきなねずみのまいにち』という本を書き上げました。その表紙には、ちゃんと「ぶんとえ サム」と書いてあります。何ともかわいらしい…このサムの書いた本を見て、私の子供達も「かわいい」って歓声を上げていました。
何かを作り上げた時、他の人に見てもらいたくなるのはよくわかる話で、サムも図書館の本棚に自分の本を並べておきました。次の日、本棚の中には、隠れるようにして外の様子をうかがうサムの姿が…その気持ちわかります。どうやら、サムの本は好評のよう。その後も『さびしがりやのチーズくん』や『ねずみやしきのなぞ』という本を次々と書き上げ、本棚に並べていったサム。すると、それらの本を見つけた子供達だけでなく、図書館の係の人達の間でも評判となり…
『としょかんねずみ』シリーズは、現在第3弾まで出ています。その中でも、特にお気に入りなのがこの1作目。私の家族は図書館でよく本を借りるので、子供達にとっても、きっと共感出来る部分が多い絵本だったのではないかと思います。本を読むこと、書くこと…「本」の魅力がとてもよく伝わってくる絵本です。
マンフレート・マイ/作 ヨッヘン・シュトゥーアマン/絵 斉藤洋/訳
食って食われての関係にある動物同士が仲良くなるのは、絵本の中ではよくある話。この絵本は、まさにそんな捕食ー被食関係にあるねことねずみが心を通わせる物語です。
巣穴の前で、見事ねずみを待ち伏せすることに成功したとらねこの「ニコデムス(ニコ)」。普通ならそのままガブリといきそうなところですが、そこはねずみも必死。頭をフル回転させ、とらねこの毛並みをほめながら、こんなことを言ったのです。「もしも助けてくれたら、素敵な世界を味わうことになる…」と。いざとなれば、いつでも食べることができるという思いもあったのでしょう。ニコは、食べたい気持ちを少しだけ我慢して、ねずみの後を付いていくことにしたのでした。
さてこのねずみ、名前をルツィーリと言います。このルツィーリ、まじめというか何というか…ちょっと変わっていて、自分を食べようとしているとらねこに対して、本気で「素敵な世界」を見せてあげようとするのです。途中、逃げ出すチャンスだってあったのに…とらねこの前に戻って来ちゃうんです。これには、ニコもびっくり。逃げられたと思っていたねずみが戻って来るなんて…
親切心から?それとも…計算?この辺りの展開は、深読みすればいくらでも深読み出来そうな含みを文章が残してくれています。物語の最後、ニコから発せられたある提案に対してのルツィーリの反応に、この物語の奥深さを感じました。
二匹の置かれている立場の変化や心境の変化、お互いの心の距離など、最後まで楽しめる絵本です。
タイトルが『ニコとルツィーリのすてきなせかい』ではなく『ニコとねずみのすてきなせかい』となっています。どうやらドイツ語の原題もそうなっているみたい。どちらも主人公のような役割を演じているのですが…その意味を想像すると、なかなかおもしろいところです。読み聞かせでは、ジェットコースターに乗る場面で盛り上がりました。ちょっと工夫が凝らされていて、子供達が食いつくところだと思います。
コマヤスカン/作
子供がまだ小さい頃、よく、ドングリを拾いに森へと出かけました。地面に転がったたくさんのドングリ。もしも、これらのドングリが全て木になったとしたら、ものすごいことになるな…なんて思ったりしたもんです。ドングリの発芽率は2割程度だという記事を見かけたことがあります。そう考えると、立派な大木へと成長できるというのは、ドングリにとって、ものすごく幸せなことなのかもしれません。
…ドーン、グラグラグラ。ある島で火山が噴火し、森が全て焼けてしまいました。その様子を、隣の島の高台からドングリたちが監視していました。「ドングリ、ドングラ〜」トチノミたろうの掛け声が森に響き渡ります。すると、森のあちらこちらからたくさんのドングリたちが集まってきました。どうやら彼らは、火山が噴火した隣の島を目指す旅に出るようです。「ドーングラグラ」となったら島へと向かう。それは、彼らの心に刻まれた定めとでもいうのでしょうか?「ドングリ、ドングラ〜」の掛け声のもと、ドングリたちは当然のように島へと向かいます。
その道中は険しい道のりです。獣と戦い、厳しい冬を乗り越え、荒れ狂う大海を渡り…やっとの思いでたどり着いた島の上、厳しい旅を乗り切ったドングリの精鋭達は、思い思いの場所に穴を掘り、静かに横たわります。そしてむかえるラストシーン。荒れ果てた大地から、静かに、しかし力強く芽を出すその姿に、なんだか感動してしまいました。
生命の力強さ、そしてその尊さまでも感じさせる壮大な物語です。でも…コマヤスカン作だけあって、笑えます。細かく描きこまれた絵の中、突っ込みどころ満載といったところでしょうか。だからこそ、最後の静かなラストシーンが、心に深く残りました。絵本紹介topへ
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