ー絵本紹介用ー
ー今日の読み聞かせ用ー
ーお気に入り絵本用ー
加藤久仁生/絵 平田研也/文
海面が少しずつ上昇し続ける町。今住んでいる家はやがて海に沈んでしまいます。すると人々はその家の上に新しい家を作るのです。沈んではその上へ、また沈んではさらにその上へと家を作り続け…家は積み木のように積み重なっていくのでした。
ある日、そんな町に住む一人のおじいさんが、家の中にある釣り堀に落としてしまった大工道具を見つけるために、潜水服を着て海の中へと潜っていきました。積み木のように積み重なった家を下へ下へと潜っていくおじいさん。そこでおじいさんが見つけたもの…それは大工道具だけではありませんでした。たくさんの思い出。一つ下、また一つ下へと潜っていくたびに、そのすべての家の中に住んでいた頃の思い出が詰まっていたのです。おじいさんはさらに深く深く潜っていきます。すべての思い出を確認するかのように…
加藤久仁生監督、平田研也脚本による短編アニメーション『つみきのいえ』を絵本用にリメイク・描きおろしたものです。アニメーションは、米国アカデミー賞短編アニメーション賞受賞など数々の賞を受賞。いろいろなメディアで取り上げられたので、「つみきのいえ」という名前を聞いたことがある方も多いと思います。この絵本は大人が読んでも十分堪能出来ます。様々な人生経験を、文字通り「積み重ねて」きた大人達、そしてこれから「積み重ねていく」子供達すべてにおすすめしたい絵本です。
青山邦彦/作・絵
物を作るのがとても得意なドワーフじいさん。ほら穴暮らしに嫌気がさしたのか、設計図を片手に見晴し台のある新しい家を作り始めました。ところが、いざ家作りを始めてみると、その材木の重いこと重いこと。とても模型作りのようにはいきません。するとそこへクマがやって来て、手伝うかわりに自分の部屋も作ってくれと言ったのです。それを聞いたドワーフじいさん、どうやら自分一人では作れそうにないので、仕方なく手伝ってもらうことにしました。その後も高い所に材木を運ぶためにサルの力を、さらには頼みもしないのにイノシシがリスがといろいろな動物がやって来ます。さらに途中でドワーフじいさん怪我をしたもんだから、もう現場は手伝いをする動物達でいっぱい。しかも、それぞれが手伝うかわりに自分の部屋を作り足していったので、家は最初の設計図からは想像もできないくらいもの凄い家へと変わっていったのでした。さあ、どんな家が完成するのでしょうか?そして、その住み心地は?
以前紹介した『おおきなやかたのものがたり』と同じく、建築士でもある作家、青山邦彦さんの絵本です。続々と集まってくる動物達、次々と書き足されていく設計図、そして何よりもどんどん姿を変えていく家。子供達も眼を輝かせて見ていましたが、読んでいる私もドキドキしてくるくらい素敵な家の話でした。ドワーフじいさんと動物達の心の交流も見事に描かれています。おすすめの絵本です。
秋山あゆ子/さく
虫達が活躍する時代劇風絵本。主演は「くものすおやぶん」こと「おにぐものあみぞう」。助演はその子分「はえとりのぴょんきち」。虫の町で起こる難事件を、ご自慢のクモの糸でズバッと解決します。もちろん、登場する町人や悪事を働く盗人なども虫達です。みんなそれぞれ虫としての個性が出ていて、虫好きの子供達にはたまらない絵本なのではないでしょうか。
舞台は、春祭りを明日に控えた虫の町。アリが営む老舗お菓子屋「ありがたや」に、「かくればね」と名乗る盗人から犯行予告状が届きました。春祭りのために用意したたくさんのお菓子が危ない!くものすおやぶんと盗人達の熾烈な知恵くらべが始まります。はたして、おやぶんは盗人達からお菓子を守れるのか?そして「かくればね」なる者の正体とは?…虫ならではの特技を活かした、この上なく痛快な捕物帳をお楽しみ下さい。
この絵本、子供達の反応がとても良かったです。まず、物語の内容がとても面白い!しかも、個性的で表情豊かな虫達が絵の中にたくさん登場します。さらには擬態を繰り返す盗人を絵の中から捜すというお楽しみまであって、もう言うこと無し。読み聞かせをしていても、各ページごとの絵が物語に絶妙に合っていて、もの凄く絵本の中の世界に引き込まれました。絵、文章とも本当にバランスがいいんです。特に物語の後半、くものすおやぶんが盗人達の擬態を見破るシーンなんかは、読んでいて我を忘れました。普段読み聞かせをしている時、子供の反応を見たりしながら読んでいることが多いのですが、このシーンの時ばかりは、自分で読み聞かせしながらも、素になって、自分の口から出てくるおやぶんのセリフや、絵の中の姿に見とれてしまいました。心を奪われたことに「ハッ」とするような感じです。時代劇風なセリフもあり、かといって難しいわけでもなく、とても読み聞かせしやすいこの絵本。親子で楽しめるとても良い絵本でした。
いわいとしお/〔作〕
ある日、風に乗って窓から入って来た一通の手紙。それは、トチくんを100階建ての家へ遊びに誘う謎の手紙でした。どうやら差出人は、100階建ての家のてっぺんに住んでいるようです。「100階建ての家」…一体、どんな家なのでしょう?想像しただけで、何だかワクワクしてきませんか?さっそく、トチくんは、手紙に描かれた地図をたよりに100階建ての家へと向かうのでした。
さあ、ここからがこの絵本のお楽しみの始まり。素敵な100階建ての家の中を少しだけ紹介します。まず、家の中には10階ごとに違う動物が住んでいます。1階から10階はネズミさん、11階から20階はリスさん…。それぞれの部屋は、そこに住む動物達に合わせて作られており、まさに100人100色。個性的な部屋ばかりです。そして、すべての部屋には階数を示す番号が付けられており、それぞれの部屋が階段やはしごでずーーーっとつながっています。「1階、2階…」と数を追いながら、トチくんと一緒に上へ上へのぼっていきましょう。次の部屋はどんな部屋で、どんな生き物がどんな生活を送っているのかな?この絵本を読む子供達は、きっと探検気分でいっぱいだと思います。
100階までの道のりは長いですが、それだけに楽しい発見もいっぱい!ドキドキワクワクするような空間を思いっきり楽しんじゃいましょう。
31X22cmの縦長の絵本を、さらに縦に開いて読みます。つまり…ものすごーく縦長の絵本です。その長さを利用して、見開き2ページに10階分の部屋が描かれており、階段を上りながら、下から上に読んでいきます。次の階には誰が住んでいるかな?という疑問文でページをめくるようになっているので、期待感が増します。部屋の様子も細かく描かれていて、いろいろな所に物語を見つけることが出来ました。最初から最後まで、親子そろってワクワクしながら読むことが出来るとても良い絵本だと思います。
たしろちさと/さく
捨てられた古時計、欠けた植木鉢、壊れた自転車…廃棄されたゴミの山が、5匹のねずみ達によって素晴らしい家へと生まれ変わる。この絵本は、まさにドキドキするくらい素敵な「リサイクル」の絵本だと私は思います。
絵本の表紙を見て下さい。5匹のねずみが力を合わせて古時計を運んでいます。彼らは、住めなくなってしまった巣穴を捨て新しい住処を探していました。ところが、どこへ行っても住処になるような場所は無く…そして、町の大きなゴミ置き場へたどり着いたのです。そこは大きなゴミの山。人間にとってはいらなくなった物ばかりかもしれませんが、彼らにとってはまさに宝の山なんです。さあ、彼らが運んでいた古時計、何に変わったと思いますか?欠けた植木鉢は?壊れた自転車は?…いろいろな「ゴミ」が素晴らしい家、そして家具へと生まれ変わっていく。その様子は、ドキドキを通り超え感動すら与えてくれますよ。おすすめの絵本です。
前作『おんがくかいのよるー5ひきのすてきなねずみ』がとても好きな絵本なので、こちらも期待して読んでみると…まさに期待を裏切らない素敵な絵本でした。はっきり言って、この「5ひきのすてきなねずみ」シリーズの2冊は、かなりのお気に入りです。あんな物がこんな物に変わる…前作はいろいろなモノが楽器に変わりましたが、今回は家や家具。ただのゴミが、本当に素敵な家へと変わっていくんです。感動です。読んでいて楽しくなってきます。たまに子供が、家の中にあるいろいろな物を使って、親が思いもつかないような遊び道具や秘密道具を作ってくれて驚いたりしますが、そんな子供の想像力はこういう素敵な絵本がその力を伸ばしてくれているんじゃないかなと思ったりもします。
秋山あゆ子/作
はちのす城で何不自由の無い暮らしを送るみつばち姫のみつひめ様。食事に着替え、遊びの相手。城に仕えるたくさんの家臣達が、あらゆるものを用意してくれます。でも、あれもしたいこれもしたいと好奇心旺盛な年頃のみつひめ様にとって、こんな決まりきった退屈な生活は耐えられないようです。ある日とうとう、自分もみんなと一緒に働きたいと部屋を飛び出して…はちのす城だけではなく、周りの村まで巻き込んでの楽し〜い大騒動となるのでした。
私がこの絵本で気に入ったのは、はちのす城の中の様子。ミツバチだけあっていろいろなものが六角形なんです。部屋の造り、家具、おもちゃ、本…なんと畳だって六角形。お城のみんなが歌う「みつばちのうた(もちろん6番までありますよ)」だって、歌詞の最後は必ず六角形で締められています。もう、本当に徹底的に六角形!「くものすおやぶん」シリーズを読んで、すっかりお気に入りになった作者の絵本なのですが、さすが昆虫好きの作者、秋山あゆ子さんの絵本です。随所にこだわりが見られます。彼女の昆虫の世界が好きな方は、その期待を裏切らない絵本だと思いますよ。
「みつばちのうた」の歌詞の中に「ハニカム ハニカム ろっかっけい」という言葉が何度も出てきます。ここで言うハニカムとは「蜂の巣」という意味です。また、正六角形を隙間無く敷き詰めた蜂の巣のような構造をハニカム構造と言い、人間の世界でもいろいろな工業製品に使われ、軽量の割に高い強度と耐久性を持ちます。蜂の巣がどうして六角形なのかは諸説あるようですが、分度器や計測器など無しで見事なハニカム構造の巣を作り上げるミツバチ達の「職人技」には脱帽ですね。
エリック・ピュイバレ/絵と文 中井珠子/訳
満月、三日月…暗い夜空で少しずつ姿を変えていく月の光。月の満ち欠けはどうして起こるのでしょうか?月は地球の周りを公転しており、太陽の光で照らされた部分が周期的に変化するため…というのは現実の話。この絵本の中では違います。月の満ち欠け屋さんという仕事があって、毎晩、月に大きな布をかぶせて光を隠しているんです。月の上には、時の流れに合わせて素敵な月の形を演出し続ける職人がいる。想像しただけでワクワクしてきませんか?
月の満ち欠け屋さんになるためのとても難しい試験に合格した男の子ティモレオン。300年以上、月の満ち欠け屋さんとして働き続け、すっかり疲れ果ててしまったザモレオンじいさんと交代するため、夜の野原へとかけ出しました。彼のポケットの中には、身体を空気のように軽くして月へと飛んでいくことが出来る魔法の薬が入っています。いざ、月へ向かって出発!…のはずが、ポケットが穴だらけで、どこにも薬が見当たりません。たった一つしか無い薬をどうやら無くしてしまったようです。これでは月にいけません。
月へ行くため、そして何よりこれからも素敵な月の姿をみんなが見られるように、町のみんなが協力して、月へ行くための知恵を出し合うのでした。
絵の美しさ、そして月の満ち欠け屋という幻想的な話…とても心に残る絵本でした。物語の後半に出てくるしかけも効果的に使われています。ちょうど長男が通う幼稚園で、毎日、月を観察するという課題が出ていたこともあって、月の満ち欠けは身近に感じられる内容でした。長女は月の上に影が見えたと言い出し、もしかすると本当に満ち欠け屋さんがいるのかも…なんて話をして盛り上がりました。今は絶版になっているようですが、見かけたらぜひ読んでみて下さい。
長尾 玲子
福音館書店「クリスマス・イブのおはなしセット」…『あっちゃんとゆびにんぎょう』『100こめのクリスマス・ケーキ』『サンタさんのいちにち』の3冊セットです。クリスマス・イブの日に起きた出来事が、女の子、ケーキ屋さん、サンタさんという3人の視点から描かれています。それぞれの物語がお互いにつながり合っているので、3冊一緒に読むと、より深く物語を楽しめるのではないでしょうか。もちろん、1冊ずつでも十分楽しめるような仕上がりになってはいますが…おすすめは絶対3冊一緒です!
ところでこの絵本、画面ではわかりにくいと思いますが、刺繍で絵が描かれているんですよ。印象は…「かわいい!」の一言。しかも13X14cmの手のひらサイズの小さな絵本ということもあって、さらにかわいさ倍増。いつまでも手元に置いておきたくなるようなおすすめの絵本です。
クリスマスイブ、お母さんにたのまれ、ケーキ屋さんへケーキを買いに来たあっちゃん。ところが、あまりにもお客さんが多すぎて、ケーキ屋さんは小さなあっちゃんに気付いてくれません。そして…とうとう最後の1個が売れてしまうのでした。
泣いて悲しむあっちゃん。そんなあっちゃんのためにケーキ屋さんが用意してくれた特別なケーキ。それは、いちごがたくさんのった、今まで見たことも無いような大きな大きな特製ケーキでした。ケーキ屋さんからの思わぬプレゼントに、あっちゃんは大喜びです。
その帰り道、あっちゃんは考えました。私もケーキ屋さんに何かプレゼントしたい…。そして、とってもかわいらしいプレゼントを思いついたのです。
クリスマスイブ、ケーキ屋さんは大忙し。朝早く起きて100個もケーキを作ります。そして開店時間になれば、店は大にぎわい。店先に用意した99個のケーキは一つ残らず全部売れてしまいました。
さあ、ここで疑問を感じる方もいるかもしれません。あれ?確かケーキは100個作ったはず…。実はこの100個目のケーキ、毎年ケーキ屋さんが自分と猫のクロのために作るとびっきり大きなケーキなんです。閉店後のお楽しみ。大切にとってあります。
さて、すべてのケーキが売れてしまった後、店の中には小さな女の子が一人残っていました。どうやらケーキを買えなかったみたい。悲しくて泣き出す女の子。そこで、ケーキ屋さんは決心します。店の奥へと走っていき…
クリスマスイブ、一年ぶりに目を覚ましたサンタさんとトナカイの、忙しいようなのんびりしたような一日を描いた絵本です。プレゼントの用意や、みんなの欲しい物の確認、道路の確認など、しなければいけないことはたくさん。それでも、のんびりした印象を受けるのは、刺繍で描かれた絵のおかげか、それともそこに描かれたサンタさんの性格からなのか…?
実は、このサンタさん、少しおっちょこちょい。しっかりもののトナカイにフォローしてもらいながらプレゼントを配ります。そんなサンタさんの姿は、何だかゆるーい感じというか…とてもほのぼのしているんです。この二人、かなりの名コンビですよ。
3人の視点から見たクリスマス・イブの出来事は、お互いの話がつながり合って物語に深みを与えていきます。といっても、決して難しい話ではありません。とてもわかりやすく、さりげなく、さらっとつながって…読み終わった後は、いい絵本を読んだという満足感が残りました。かわいらしい絵本ということもあって、子供たちの反応もよく、クリスマスを前に素敵な読み聞かせが出来たと思います。絵本紹介topへ
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